近年は、東国大名の研究で見られる網羅的な文書収集の上に立った基礎的研究が始まった感があります。
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林 哲『会津芦名四代』(歴史春秋社、昭和57年9月10日)
盛氏に関する記述が7割ほどを占める。その他、盛隆・義広まで及び、葦名氏の全盛期~没落期までを記述している。典拠とする資料は、後世の編纂物(伊達藩の正史や軍記物語など)が主であるが、出典を明記して叙述しているので、利用には便利だと思う。現在、葦名氏について簡便に知ることのできる本としては貴重。
佐藤金一郎『歴春ブックレット28 向羽黒山城跡ガイドブック』(歴史春秋社、平成15年6月6日)
向羽黒山城は、盛氏によって築かれた城。永禄4年着工、同11年に完成したと伝える。平成3年から3カ年にわたり実施された学術調査を踏まえた、一般向けにやさしく記述されたガイドブック。縄張図・写真も多数収録されています。こんなに大きな城を「隠居城」とはとても思えない。
小林清治『歴春ふくしま文庫55 戦国の南奥州』(歴史春秋社、平成15年2月5日)
東北戦国史研究で著名な小林氏が、一般向けに書いた通史本。構成は、「戦国のはじまりと群雄」「武士と百姓」「戦国の社会」「宗教と芸能」「戦国の終焉」。伊達氏の制覇過程を縦軸に、村落や芸能など社会の様相を横軸において、南奥の戦国期社会を浮かび上がらせようと試みている。だから葦名氏ばかりではないのだが、葦名氏を取り巻く情勢を押さえるには簡便で確かな本といえる。
小林清治・大石直正共編『中世奥羽の世界』(東京大学出版会、昭和53年4月20日)
構成は、「中世の黎明」(大石直正)、「鎌倉幕府と奥羽両国」(入間田宣夫)、「南北朝内乱の中で」(遠藤巌)、「国人の連合と角逐の時代」(伊藤喜良)、「大名権力の形成」(小林清治)、「中世奥羽の終末」(藤木久志)。古い本だが、東北戦国史研究では避けて通れない本だろう。前記の小林氏本と同様の理由で目を通した方が良い。難易度は高めですが。
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