九七式中戦車チハほか
左から、
『グランドパワー 261号 日本陸軍九七式中戦車』(ガリレオ出版、2016年)2,420円(税込)
『日本陸軍の機甲部隊1 鋼鉄の最精鋭部隊』(大日本絵画、2008年)4,800円(本体)
『日本陸軍の機甲部隊2 大陸の機甲戦闘演習』(大日本絵画、2009年)4,800円(本体)
グランドパワーは、総頁数144頁のうち14~113頁がチハ関係の写真・資料であり、もう一冊がチハと言っても過言ではありません。巻頭カラー写真(1~13頁)は陸上自衛隊「東部方面隊創立56周年記念行事」の写真集で、陸自車両がこれまた多数載っております。これはこれで良いですな。
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さて目次を見ますと、ファインモールド社長鈴木邦宏氏の「九七式中戦車の開発」、戦車等の研究者国本康文氏の「九七式中戦車の主砲」の二論文が掲載され、さらに『九七式中戦車保存取扱教程』(陸軍機甲整備学校、昭和17年12月)が一部抜粋の形で収録されています。
教程を読んでいてびっくりしたのは転輪の記事でした。チハには片側6組の下部転輪がありますが、最前端と最後部は同一の単列転輪で、他は複列転輪であり構造が違うのです。図を載せれば一目瞭然ですが、著作権の関係でそうもいかないので、本を見てもらうしかありません。
また「「タイヤ」ハ硬質「ゴム」製ニシテ発熱防止ノ為特殊形状凹ヲ與フル外二、五粍ノ緊代ヲ與ヘ緊著セシム」との記述があります。写真資料と合わせて、転輪のゴム部分(タイヤ)には溝があり、それは発熱を防止することを目的としていたことがはっきりと分かったのです(私がね)。
そして「二、五粍ノ緊代ヲ與ヘ緊著セシム」とは、「緊(と)」(みしと)は隙間なく密着している様を意味しているので、ゴム製タイヤの直径をリムより2.5ミリほど小さくして(「緊代」)、リムにぴったりとつけること(「緊著」)を言っていると思います。タイヤがリムと同じ直径だったら簡単に脱落しますもんね。
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日本陸軍の機甲部隊の2冊は大型写真集です。掲載されている写真は鮮明なものばかりで、ちょっと驚きます。写真の由緒は、昭和16年に創刊された対外宣伝グラフ誌『FRONT』のために撮影されたものです。お上の御用ですから、軍関係者の全面的協力のもとに撮影が行われたのでしょう。撮影者は菊池俊吉氏。本書では、菊池氏が遺したオリジナル・ネガからのプリントが使用されたそうです。
1巻目は、千葉陸軍戦車学校と習志野騎兵学校でのもの。チハだけでなく、ハ号やホイ(試製一式砲戦車)、軍用オートバイ、九七式軽装甲車、シケ(九八式4トン牽引車)、機動九〇式野砲の写真も複数あります。とくにホイはたった1両のみ試作されたと言われており、その鮮明な写真を見ることができるのが奇跡であり、本書の価値を高めるものです。
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2巻目は満州の教導戦車隊の演習状況を中心に、国内で行われた観閲式などの行事パレードの写真を収録しています。チハやハ号を中心に牽引車や野砲などの写真が掲載され、なかでも新砲塔型で車台が前期型である「ハイブリッド」チハの写真も収められています。戦車兵たちが談笑している写真など、当時の雰囲気がよく分かりますし、各部隊の迷彩やマーキングなど、写真が鮮明なだけに興味深いものがあります。
それぞれ約150点の写真を収録し、頁数は200頁に迫るもの。大判に引き延ばされた写真は迫力が違います。ちょっと高いけれど、持っていて損はないと思います。
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